春秋時代の魅力
私は中国史については全般的に興味があるのですが、一番好きな時代はと言うと… やはり紀元前の春秋時代になるかと思います。
都市国家クラスの小国も含めれば優に数百の国が存在し、周王室をはじめあらゆる権威が揺らぎだし、道義は乱れ実力主義の風潮が次第に強まっていく… 混沌の時代。
ただ、逆に言えばその後の戦国時代とは違い、いまだ権威も道義も揺らぎはすれど地には墜ちず、実力主義の風はまだ強固な社会的な壁を吹き飛ばすには至っていない… そんな半端さがもたらすのか、何処か他には無い妙な雰囲気が漂うこの時代は、私にはたまらなく魅力的に感じられます。
「スッポン汁を巡る軋轢により国が滅んだ」
「羊肉のスープを巡るトラブルで戦に大敗」
「蛮族に攻められた際、兵士を集めようとしたら『鶴を使え』と拒否された」
「君主が領内視察に出かけた際、留守中に都が隣国に攻め落とされて人々が連行されており… 帰ってきたら無人だった」等々。
何れもこの春秋時代ならではの、どこかとぼけた出来事かと。
この時代は戦国時代ほど「判り易くない」為か、面白い割には今一つ人気が無い気もします(「春秋・戦国時代」と称する本の場合、感覚的に両時代の割合は良くても2:8くらいの気が)。
基本史料となる「春秋左氏伝」にしても、必ずしも読みやすいとは言えないでしょう。
しかし一度壁を乗り越えてしまえば、噛めば噛むほど味わい深くはまりかねない… そんな不思議な時代と言えるのではないかと思います。