文和春秋

主に歴史や本についての徒然語り

始皇帝への評価に対し感じる、違和感について

世間的に高く評価されているが、自分では今一つピンと来ない。

そんな事は誰しもあることだと思うのですが、私にとってその代表例はと言えば、やはり始皇帝になるかと思います。

 

戦国七雄の争いを征し、初めて天下を統一した。

皇帝制・郡県制など、二千年に及ぶ中華帝国の原型を作った。

貨幣や計量単位を統一し、万里の長城ら歴史に残る大事業を行った、等々。

無論これらは見事な業績ですし、それを否定する気も無いのですが… どうも誤解に基づいたり過大だったりする部分も少なくない様な気がしてなりません。

 

例えば天下統一についてですが、「他の六国を次々と滅ぼして…」などというと、彼がまるで熾烈な争覇戦を勝ち抜いて成し遂げた様な印象を受けると思うのですが、実際の所、彼が即位した時点で天下の半ば程は秦の領土、争覇という意味でも曽祖父・昭襄王の時代に、勝負付けはほぼ終わっていた、といった面が、軽視されてはいまいか。

彼が始めた郡県制らの諸制度についても、彼がグランドデザインを引いたのは間違いないとしても、それはあまりに拙速・原理主義的で実用に耐える強度が欠けており、定着の功は諸制度を現実路線に落とし込みつつ、時間を掛けて整備し続けた蕭何らの漢帝国の人々に帰する面が多いのでは、等々。

そしてなにより、彼の死後に秦帝国があまりにあっけなく瓦解した事にしても、「趙高の専横云々」で免罪されがちですが、通算25年の在位と天下統一から11年の時間がありながら、死後3年しか持たない体制しか作れなかった事には、当然彼の責任は免れないのでは、とも。

少なくとも天下巡行より先に、為すべき事は幾らでもあったのでは無いでしょうかね…