文和春秋

主に歴史や本についての徒然語り

面白い古典としての論語一読の勧め

私は中国の古典が好きで、訳本ではありますが結構色々と読んでいるのですが、それらの中で好きなものの一つに「論語」があります。

全文を読んだ事があるかはともかく、その一部分や名前すら知らない、という方はそういないと思うのですが、それだけ名高く身近な古典の故か、論語の名を冠した本はあまりに多く… 中には「これは孔子では無く貴方の思想ではないか」と言いたくなるようなものや、「聖人視という色眼鏡」によりその言動全てを道徳的に解釈するものなど、付会・曲解の類も少なくないように思います。

そこで、僭越な事は承知なうえで、一介の論語好きとして2冊、お勧めの論語を挙げてみる事に致します。

 

〇「論語」(中公文庫 貝塚茂樹

これは論語の訳本でもかなり分厚い部類になりますが、個人的には一番のお勧めです。特に孔子の各発言を、その発せられた背景をそれぞれ考察して説明してくれている所など、生きた論語を理解するのにうってつけかと。

 

〇「現代語訳 論語」(岩波現代文庫 宮崎市定) 

こちらは初めて読むというよりは、論語を読んで興味を持ち、より深く考えてみたい方向け、言うなれば2冊・3冊目の論語として最適ではないかと。

著者の通説にとらわない、それでいて興味深い解釈には、色々と考えさせられると思います。

 

何にせよ、虚心に論語を読んでみれば、孔子に聖人だの杓子定規な道徳家だのといった印象は、決して抱きようが無いのではないかと。

お堅いイメージを抱き、何となく食わず嫌いで捨て置くには勿体ない古典ですので、読んだことのない方には是非一読し、人間孔子を味わって頂きたいものです。

「音楽に熱中するあまり、昨日の食事すら思い出せない」「謀反人の招聘に、ふらっと応じそうになる」「もう何もかも嫌になって、筏で海に繰り出すかと口走る」等々。

これらも皆、紛れもなく論語に出てくる孔子の姿ですので。