文和春秋

主に歴史や本についての徒然語り

平安時代

「日本一の大天狗」考

「日本一の大天狗」。 これは源頼朝の後白河法皇評として有名であり、法皇の曲者ぶりを示すものとしても良く紹介される言葉かと思います。 しかしよくよく考えればこの言葉、どういう意図が込められているのでしょうか? そもそも「曲者」に対する言葉として…

後白河法皇の評価

後白河法皇とはどのように評すべき人物か? 一般的には「老獪でしぶとい政治家」「常に武家の勢力均衡を図り策動する謀略家」といった一筋縄ではいかない曲者のイメージが強い気がするのですが、個人的にはどうも関連する知識が増えていく程、過大に見られて…

北条時政は「慧眼」なりや

「平家全盛の世に頼朝を婿に迎えた慧眼」「政治的天才」 北条時政に対したまに見るそんな激賞に、昔は大げさとは思いつつも違和感という程のものは覚えなかったのですが、奥富敬之氏の幕府成立以前の北条家についての検証などを見るにつき、だんだんと疑問を…

藤原道長の行動から推察する摂政・関白の地位と権限

藤原道長が摂関政治の全盛期を築き上げたのは有名ですが、その20余年の政権期の大半が右大臣・左大臣という立場で、摂政になったのは最後の1年余に過ぎないという事については、案外知られていない気がします。 以前、前から気になっていたこの「不思議な事…

平清盛の出世に対する一考察

「平清盛は白河院の落胤」という話は昔からありますが、果たしてそれにどの程度の信憑性があるものなのか? 以前は異数の出世を遂げた清盛に対する、やっかみ交じりの雑説の類という認識で、正直論ずるに足りない話としか思っていなかったのですが… 「清盛以…

「英雄未満」源三位②

治承4年(1180年)の源三位頼政の挙兵。 それ自体は短期間で鎮圧されて自身も自害に追い込まれるも、結果的には連鎖的に各地で反平家の挙兵を誘発し、治承・寿永の大乱の先駆け、「全盛平家の滅亡」という事態にまで発展するという、まさに歴史を動かした一…

「英雄未満」源三位①

源頼政、通称源三位。 歴史上では以仁王を擁していち早く平家打倒に立ち上がった老将として、説話の世界でも天皇を悩ます鵺を退治した武人として、それなりに名の通ったお方です。 ただ、行動それ自体は「英雄的」とも言えるのに、裏の方ではなんとも言えな…

「鹿ケ谷の陰謀」考

平氏政権の時代に、後白河院とその近臣達が平家打倒を謀議するも密告によって露見し、関係者多数が処分された「鹿ケ谷の陰謀」と呼ばれる事件があります。 この事件について、以前は「無謀で杜撰な計画がばれたもの」程度の認識で、特に深く考えてみる事もな…

「義経の悲劇」の原因  ~彼の常識と意識について~

源義経というと、一般的には「大功を立てながら兄に疎まれ、悲劇的な最期を遂げた英雄」といった印象を持たれている様に思うのですが、私としてはその印象、ことに「悲劇的」の部分が引っかかってなりません。 それこそ鎌倉で「武士の自立」という命題を果た…

源義経の軍事的才能についての一考察

源義経という人物はどう評価すれば良いのか? 昔は「政治的センスは皆無の戦の天才」という評価で良いだろう、と特に悩むことも無かったのですが、数年前に「平家物語」(講談社学術文庫)を読んだのを切っ掛けに、軍事面についてもあらためて考えるようにな…